コイン★悪い男の純情
 3人は部屋に入った。

 かんなは淳也の目の脇と唇の止血をし、そこにバンドエイドを貼った。

 「みぞおちと腕を蹴られたようだけど、大丈夫」
 「大丈夫です。普段から鍛えていますから」

 「腕をめくって見せて」
 「うわあ、青くなっているわ」
 「これ位なら」

 「さっきは、淳也さん、ご免なさいね」
 「何をですか」

 「私が淳也さんの事を婚約者って言ったでしょう。ああでも言わなければ、前崎は引き下がらないと思ったの。許してね」

 「僕は嬉しかったです」

 「ええ、本当に」
 「本当です」

 「こんな、子持ちでもいいの」


 「僕はかんなさんの家族になれたらいいな、と思っていましたから」


 「私の家族に!! 本当に本当」

 「本当に本当に本当です」

 かんなは感激して、胸が熱くなった。


 (かんなさんの家族になれたらいいな)


 (何て、素敵な言葉なの。これって、プロポーズなのかな)


 かんなは嬉しくて、淳也の胸に飛び込んだ。

 「いてててて~。今日は勘弁して下さい」

 淳也はみぞおちの辺りを押さえて、思わず呻き声を上げた。

 「あらっ、ご免なさい。私ったら、嬉しさのあまり、淳也さんが怪我をした事を忘れていたわ」

 「ああ、みぞおちの辺りがズキズキ痛む」
 「淳也さん、服を持ち上げて。見て上げるわ」

 「わかりました」
 「あら、すごいあざになっているわ。病院に行った方がいいのじゃない」

 「少し、様子を見てみます。じゃ、こんな状態ですから、僕はこれで失礼します」

 「ひとりで帰れる」
 「大丈夫です。何とか、帰ります」

 淳也はみぞおちの辺りを押さえながら、帰って行った。















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