コイン★悪い男の純情
12話 傷
 (3人が家族になれば、どんなに素晴らしいだろう。でも、待ってよ。 勇太がパパの事を寝小便のおっちゃんと言ったりして・・・)

 そう考えると、かんなはプ~と吹き出した。


 淳也が歩いて家に着く頃には、みぞおちの痛みは少し楽になっていた。

 淳也は上半身を裸になり、洗面所の鏡に蹴られた辺りを映していた。

 「大分あざになっているが、これ位なら大丈夫だ」

 そこに妹の智子が現れた。


 「あら、兄さん。怪我をしているけど、喧嘩でもしたの」
 「ああ、ちょっと」

 「ヘルパーなんか送らなくていいのに、余計な事をするからよ」
 「もう、いっぺん、言ってみろ」

 「何度でも言って上げるわ。余計な事をしなくていいのよ」

 「お前がお袋の事を何もしないから、仕事以外の時間まで、あの人がお袋の世話をしているのと違うのか。送るのは当たり前だ」

 「何よ。私が何もしないだって。私がどれだけくたくたになって介護したのか、何も知らないくせに」

 「以前はそうかも知れない。しかし、最近はお袋から逃げているのじゃないか」


 「くたくたに疲れたのよ。夫だってこんな環境がいやになり、最近では家に帰って来なくなったわ。みんな、母さんのせいよ・・・」


 そう言って、智子が泣き出した。



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