コイン★悪い男の純情
 「母さんのせいにするな」
 「何よ。兄さんなんて・・・」

 智子は涙で言葉にならない。

 「・・・母さんのせいで・・・母さんのせいで、私の家庭は崩壊してるのよ」
 「・・・」

 「兄さんはいったい何をしたと言うの。みんな、私に押し付けてばかりじゃないの。私は気が狂いそうなのよ」
 「何を」



 「ギャアアアアアアアア~~~」



 智子が、悲鳴とも呻き声ともわからぬ奇声を上げた。
 淳也は智子が気が変になったか、と心底驚いた。


 リーン、リーン、リーン・・・。


 その時、居間の電話の音が鳴った。

 「はい、吉見です」
 淳也が電話を取った。



 「お 願 い や。私 を 殺  し  て。淳 也、お 願 い や、 首 を 絞    め  て」



 電話を掛けたのは、母親のたえだった。枕元の携帯電話から電話をしたのだろう。

 
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