コイン★悪い男の純情
 「そんなことより、折角ホテルまで来ている事だし、中に入って楽しんで行きません」
 「今からですか」
 「そうよ。たっぷりと可愛がって上げるわよ」

 (この女は嘘で固めている。と言う事は、生命保険金の6000万も、遺産の3000万も嘘か。道理で、金の事を自分からべらべら喋っていたな)


 (あんな情報を鵜呑みにするなんて、俺も焼きが回ったかな。金の無いババアなんか引っ込んでいやがれ)

 純一が心の中で麻由美を罵った。


 「何を考えてるの。考える事なんかないじゃないの。早く行きましょう」
 「今日は駄目なんだ」

 「どうして」
 「喧嘩をして腹を蹴られて痛むのだ。顔にも傷があるだろう」

 「本当ね。だけど、残念よね。ここまで来て」
 「またにしてくれ」

 「ここは大丈夫なのでしょう」

 麻由美は椅子をずらすと、純一の股に手を這わせた。

 「やめないか」
 「痛くないように工夫して上げるわよ」
 「いい加減にしろ」

 純一は椅子から立ち上がると、勘定を麻由美に任せ、ひとりでエレベータに乗った。そして、閉じるのスイッチを素早く押した。

 「待ってよ!」

 その声を遮断するように、エレベータの扉が閉まった。




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