コイン★悪い男の純情
 『LIP』は、船大工通りの全空ホテルのすぐ近くにあるクラブ。

 そこは、ボックス席が40席位あり、クラブホステスが12人ほどいた。


 そのクラブホステスのひとり薫と純一は、同伴で全空ホテルの5階にある日本料理『雲上』で夕食をしていた。

 先付けに続いて造りが出て来た。

 その時、純一は和服で決めている薫に、脱いだ後を考えて
「着付けは自分で出来るのですか」
と、聞こうと思っていた。

 その前に、薫が口を開いた。


 「私芝ちゃんに頼みがあるんやけど、聞いてもらえるかな」
 「えっ、頼みって、何ですか」

 「うちのお客さんでは、芝ちゃんしか出来ない内緒の頼み。引き受けて欲しんやけど」
 「僕にしか出来ない内緒の頼みって、いったい何ですか」



 「私のライバルをメロメロにして欲しんやけど」
 「ライバルをメロメロに」



 「そう。仕事が出来ない位にしてもらえば、それで結構よ。芝ちゃんなら簡単でしょう」


 「ライバルって、ナンバー1のリサさんですか」
 「よくわかったわね」


 薫がにんまりと微笑んだ。




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