コイン★悪い男の純情
 「俺も、これまで随分と危ない橋を渡って来たもんだ」
 「しかし、不思議と警察には縁が無かった。これも欲を出さなかったお陰かな」

 「女たちは、達者で暮らしているだろうか」

 「リサは、アル中で『RIP』を首になったらしい。少しやり過ぎたかな。悪かったな、勘弁しろよ」

 「勝手かもわからないが、みんな幸せに暮らして欲しい」
 
 純一は、心の中で女たちに頭を下げた。



 ジョッキの中には、100円硬貨が3分の1位入っている。



 (もう使う事もないだろう。勇太君にでも、小遣いにプレゼントしようか)

 純一はマンションをいつでも引き払えるように、てきぱきと後片付けをした。

 
 「よし、これでいいか」
 

 かんなの顔を思い描き、純一が力強く呟いた。

 
 「堅気の仕事を探そうと思う。苦労を掛けると思うが、きっと幸せにしてみせる」


 実家への帰り支度を済ませると、純一は阪急梅田駅に向かった。



 


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