摩天楼Devil
といっても、未成年なんで、夕方の準備中の時間帯に、烏龍茶と煮物なんかを食べた。


「珍しいな。父さんが俺を誘うなんて」


「たまにはいいだろ。遼と違って、話す機会ないしな」


――別に俺のことなんて興味ないんだろ?


まさにそうだった。


親子の会話なんてなく、父さんは友人だという店主とばかり話す。

ただ、別に憂鬱ではなかった。


なぜか、この店主が気に入ってしまった。


平凡な、父さんとなぜ仲がいいんだ? というくらい普通の人懐っこい人で、

藤堂と聞くと、ビビる人間だっているというのに、父さんとも俺とも、飽きることなく喋った。


父さんは“これ”がいいと言った。


疲れてる自分を笑わせてくれると。


実際、自分もそうだった。


あと――


「これも食べてみて」

店主の奥さんが、次々と料理を出してくれた。


あれだけ、女嫌いだったのに、なんとなく憎めないタイプの女性だと思えた。


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