摩天楼Devil
それから、神崎のおじさんや、役員達にかつて言われたセリフ。


『お前は神崎を背負って立つのだ』


『せいぜい、ただのボンボンじゃないところを必死になって、我々見せつけるといい』


『やれやれ、マスコミも追うでしょうな。なんせ……“あの事件”の後、代わりに選ばれた“跡取り息子”ですからな』


『目立つ行動はしないように……アイツのようにな』



――ダメだ。


俺はもう戻れない……


ごめん、と心の中で詫びながら、俺は妃奈の想いは、

熱と風邪から気弱になり、錯覚を起こしているだけ、みたいなことを告げた。


彼女は、ただでさえ、うるんでた瞳をますます湿らせてた。


俺はどうもできずに、部屋から逃げた。


――これでいいんだ。

そうだよな?


兄ちゃん?


俺にはさ、守りたいもんができてさ……


なぁ、兄ちゃん……


俺も結局、ひとりぼっちだ……


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