摩天楼Devil
本当はもっと、父さんは“期間”をくれていたが、早く去った方がいい、と予想した。


俺はおじさんに妃奈に告白されたこと、受け止められないこと、


このまま、逃げることを伝えた。


絶対、妃奈には言わないでほしい。と、“神崎家”に“戻る”日を伝えた。


「ごめんなさい……殴ってもいいよ……」


姪を利用するだけ利用した、とでも、無駄に傷つけた、でもいいから、責められたほうがいいと思った。


「……それなら、妃奈だろ。やるとすれば……」


妃奈の叔父さんは怒るどころか、寂しくなるな、と言ってくれた。


――さようなら、


俺の理想のお父さん……



部屋に戻ると、さっそく片付けに入った。


洋間で、衣類などをまとめたあと、台所へ。


妃奈が何度か使用した、包丁、菜箸などを手に取ったとき、まるで何年も会ってないくらい、愛しくなった。


るみおばさんを失ったときの気持ちに似ているかもしれない。


――いや、あの人は逃げたんだ。


今回は、俺が逃げるんだ……


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