摩天楼Devil
「彼女は返す。大事にしろ」


『ずいぶん、上から目線じゃねぇか。詫びる気ねぇだろっ』


篠山駿は徐々に苛立ちの声を上げる。


俺も最初の最後で大人気ないことを言った。


「妃奈が俺に惚れたのは、俺のせいじゃないだろ。

お前より、俺のほうが魅力があったってだけだ。

とにかく、やましい関係にはならなかったんだ。手は出してないから感謝しろ」


『はぁ?当たり前だろ!人の女の心奪っておいて、手出してたら、神崎だろうが、藤堂だろうが、ぶっ殺してるよ!』


「まあまあ、落ち着け。とにかく、返した。ちゃんと捕まえておけよ。

本当にいい女だ。俺がいなくても、別の野郎に取られないよう、ちゃんと守れよ。じゃあな」


全てを消し去るように、あっさりと電話を切った。


さぁ、これで俺は一人。


でも、これで戦いやすくなった。


俺は神崎不動産のビルに向かった。




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