Purewhite Devil
気が付けばピアノの方へと向かって足が動いていた。


黒の革張りの椅子に腰掛けると胸がいっぱいになった。


初めて座った。


ここからでも視界の端に見えてたんだね。


私が座ってた場所。


見えてないと思ってたからいつもお弁当がっついて食べてたよ。


もっと気にしながら食べれば良かったな――。


ピアノを開けて指先を鍵盤にそっと落とした。



「――ッッ」



感情が溢れ出すかの様にドッと涙が溢れ、信じられないくらい溢れ落ちた。


どんなに涙が溢れようと、鍵盤から手を離せなかった。


薫君に触れられた様な気がしたから――。


薫くん――。



「好きッッ――だ、い好き――ッッ」



静かな部屋に虚しく響き、その後は暫く私の情けない啜り泣く音だけが響いていた。



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