甘くて切なくて、愛おしくて
もっと怒られるかと思ったけれど、話を聞いた後の美香子の意外な反応に
どう返せばいいのか分からなくなる。黙って美香子の次の言葉を待っていると
さらに意外な返事が返って来た。
「あたしも父子家庭だったからね、だからその子の気持ち、凄く分かる」
少し切なげな瞳は、多分過去を思い出しているんだろう。
美香子は更に話を続けた。
「うちの父親はさ、どうしようもない人だったんだけれど。それでも職を転々としながらあたしをここまで育ててくれたの」
「そうだったんだ」
「だから、たった一人の自分の味方でいてくれる人を、その子はきっとバカにされたって勘違いしちゃったのね」