音コイ
「ご、ごめんね?
あやちゃん。
てっきりもう知ってるのかと思ってて。
ちゃんと説明するべきだったね...」



私を抱き締めている瀬納さんを
なんとか広瀬さんに
はがしてもらってから10分弱。



広瀬さんが話してくれたのは
瀬納さんのイヤホンをしている理由。


要約すると
人の<話し声>に
極度のストレスを感じる彼は
それを遮る為に
四六時中音楽を聴いているらしい。



そんな話あるの?と思う反面、
今までの行動を
それで納得してる自分がいる。


「驚いたよね?
ほんとにごめんなさい...」


広瀬さんは
私が知ってると思ってたみたいで
さっきからしきりに謝ってる。



「いいんです!
なにも知らないで怒った私も悪いし。」


「でもじゃぁ
なんで私の声はいいんですか?」


今はまたイヤホンをしているけど
さっきまでは
「お前の音もっと聞かせろ」
ってしつこくて。



「たぶんあやちゃんの声が
自分にとって心地いい音だったんだよ。
いや、そんな人に働きに来てもらえて
本当によかったぁ。」


そう言って広瀬さんは喜んでるけど
「え。私クビじゃないんですか?」


あんなことしたのに?



「違うよ?
だってなにも知らないんなら
あんなことするのも普通だし。」

!!!!!


「あ、ありがとうございます!」



「いえいえ。
うちの瀬納をよろしく。」



「...はい!」











やった!
仕事無くならなかった!


目の前のそれしか見えていない私は
それからの苦労など知らず
ただただ喜んでいたのだった...






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