新撰組蝶乱
1:御目見得
時は昔、暗闇に包まれた江戸の町。
午後10時。
新撰組頓所前に、奴は座っていた。
深く被った編み笠、胡座をかいた左手に置かれた大きな風呂敷、正面のはだけた着物からは、鎖骨下まで巻いたさらしが見えた。
物音ひとつしない暗闇のなかで"奴"は、微動だにせず座って、そうーーー
ただ座って、何かをまっていた。
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