この場所で。






「………今日はちょっと遅かったね」


いつもの笑みを浮かべて、飯島直樹は言った。


昨日のあの寂しそうな表情が嘘のようだ。


「これでも……急いできた……」










「……少し顔が赤いけど、

……………熱でもあるの?」



少しは心配に思ったのか、笑顔が曇った。



気づけば、私は暑くもないのに汗をかいている。




「………なんでもない」




「そう?

でも………」



















あれ、なんだろ……


耳が聞こえにくい。



なんだかクラクラするし、焦点が合わない……。



フッ、と体の力が抜ける感じがして、

それからのことはよくわからない。



覚えているのは、意識がなくなる直前の、

飯島直樹の顔―――――。








< 25 / 59 >

この作品をシェア

pagetop