この場所で。
「………今日はちょっと遅かったね」
いつもの笑みを浮かべて、飯島直樹は言った。
昨日のあの寂しそうな表情が嘘のようだ。
「これでも……急いできた……」
「……少し顔が赤いけど、
……………熱でもあるの?」
少しは心配に思ったのか、笑顔が曇った。
気づけば、私は暑くもないのに汗をかいている。
「………なんでもない」
「そう?
でも………」
あれ、なんだろ……
耳が聞こえにくい。
なんだかクラクラするし、焦点が合わない……。
フッ、と体の力が抜ける感じがして、
それからのことはよくわからない。
覚えているのは、意識がなくなる直前の、
飯島直樹の顔―――――。