この場所で。
「よいっ……しょ、っと」
少し高い位置にある窓によじ登り、
ドアの鍵は開けないで準備室に向かった。
美術室の中からしか入れない準備室は、彫刻とかイーゼルとか、
他にも色んな画材が置いてあって、絵の具の独特な匂いがする。
準備室につながるドアは鍵が壊れていて、準備室の中からしか鍵がかけられない。
だから、簡単に開けられた。
「みんなが来るまで隠れてよっと」
そう独り言を言って心の中で笑い、棚と壁の間にある少しの隙間に隠れようとした。
「……っ!?」
人がいるなんて微塵も思っていなかった私は、声にならない悲鳴と共に後ずさりした。
無造作に置かれた大きな作品の陰に誰かいる。
イーゼルに躓き、激しくしりもちをついた音で、その人は目をあけた。
どうやら眠っていたらしい。