Quiet man
両手でふくよかな"オッパイ"を

ジェスチャーして見せたら・・


やっと・・以前みたいな、

夢にまで出てきた

俺の好きな破顔を見せてくれた。



「ふえー、もー終わりました?」


「「 えっ? 」」



気が着いたら車は既に鰻屋の前。


丁度、俺が彼女の肩を抱き寄せ

コメカミにキスをしてたトコだ。


ニヤニヤ振り向いてた運転手は

ネクタイを緩め、ウチワで自分

を扇ぎながら。如何にも

"アチー"ってアピってやがる。


・・モチロン、車内のクーラー

が利いていないわけじゃない。



「かなんな、ほんまに・・

こっちがハラハラしたがな。」


「面目ない」



テレの混じる苦笑いで尻の

ポケットから財布を取り出した。



「2,680円やけどエエ話聞かせ

てもうたし2千円にマケとくワ。

ほな、お幸せに・・! ふふっ。」




・・なかなか良い町だ。


が。まさかこの俺がついウッカリ、

タクシーの中で"2人の世界"を

繰り広げてしまうとは・・。


油断した。




「旅の恥は

掻き捨てって云うだろ?」



自分にもそう言い聞かせてる。



「・・・そうやんな。」



赤面するナギを伴い、

笑いを噛み殺しつつ・・

暖簾を潜るのだった。




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