Quiet man

「・・どっちだろうな。」

「・・女の子ちゃう?」

「なんで?」



俺はその夜、ナギのマンション

に泊まらせて貰っていた。

ギシギシ云う恐いロフトで2人、

布団を敷いて横になっている。




「・・神様からの戒めでな?

女を泣かしてきた男に出来る

子は女の子ばっかりやねんて。」


「・・本当に?」

「らしいで?」



それが証拠だって、

云われたらイヤだな。

男女間の事だ、泣かす、

泣かされた・・なんて誰でも

多少あるものなんじゃないの?




「俺に泣かされたと思ってる

のは、あの牧ぐらいじゃない?」




当時の事を話す前に俺は

ナギの手をしっかりと握った。



「何せ・・

凄くヤキモチ焼きでね。」



女性スタッフにまで噛み付いた

事もあった。

喧嘩した挙句、同棲してた

マンションの浴槽で手首を

切って自殺未遂だ・・。



「そうだ、ハルミさんがね・・

その牧と取っ組み合いの喧嘩

したんだって・・。」


「ええっ?　何でまた・・。」



沢村の店に行って、問い詰めた

ら、アッサリ白状したらしい。

強盗の事は偶然で、それを

切っ掛けに、俺の不信感を煽り

ナギとの関係をデッチ上げよう

としてた。全て牧に脅されて

やった事だった。



「あの日から数日後、俺の留守

中に彼女が訪ねて来たんだ。」



薬物中毒を起した俺のその後が

気になったんだろうな。


そこでハルミと鉢合わせして、

彼女に食って掛かったのだ。

あの絆創膏の下には牧による

爪あとがあった様だ。



ハルミの云った言葉・・

"一都にオトコ盗られてる"



・・・沢村はホストになる前、

金に困って"男娼"をやってた。


それが脅しネタだった・・。


そのパトロンになったのが、

当時の牧の男だった。

俺が言っていいのかどうか

は解らないが、

彼女もよくよく男運がない。