キオクノカケラ
「結城くん、何で笑ってるの。
私、今怒ってるんだけど」
詩織に言われて、自分の頬が緩んでいることに気付かされる。
はっとして慌てて表情を真剣に戻すと、
詩織は少し呆れたようにオレを見上げてから、腹に軽く拳を叩きつけた。
「…私だって、同じ気持ちなの。
私だって、結城くんが傷つく姿を見たくない」
「詩織…」
「結城くんが誰かに傷つけられるのは嫌。
しかも、それが私のせいだなんてもっと嫌。
だから、自分で何とかできるなら、やってみようと思ったの」
彼女は泣きそうな声で、静かにそう言った。
それが今回の方法ってわけか。
詩織は詩織なりに考えて、オレを守ろうとしてくれてたんだな。
オレはそっと詩織を抱き寄せると、優しく頭を撫でる。
「ちょっ、結城くん?!」
困惑して抵抗しようとする詩織を、離れないように強く抱きしめる。