万年樹の旅人

「すぐ俯いたりするのやめてくんない? さっきさ、何描いてるって訊いただけだろ」

 確かに彼の言うとおりだ。そう思って頷く。

「……うん、ごめん」

「言われたら言い返すくらいの根性でいろよ」

 それは難しいよ、と言いたかったが言えず噤んだ。ニコルにとって簡単なことかもしれないが、ユナにとっては至難のわざだ。ではニコルに「もう少し穏やかに微笑っていたほうがいいよ」と告げたらどうなるのだろう。おそらく、もともとの目つきがわるいであろうニコルには難しいのではないだろうか。それとも彼は努力する、と簡単に言ってしまえるほど人間ができているのだろうか。ユナは、努力したところで、本来の性格なんか変わらない、と思う。変われるものなら、変わりたい。


「なんかイライラすんだよ。そんなだから周りが面白がるんじゃねえの」

「……ごめっ――」

 ――ん、と言いかけてそれは続かなかった。唐突に、眉間とこめかみに、激しい痛みを覚えユナはその場に蹲った。

「おい! どうした!?」
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