万年樹の旅人

「ルーン様! どちらへ行かれるのですか!」

「しつこいわね! そんなヘンテコな髪飾りを着けなくちゃいけないくらいなら、こんなパーティー抜け出してやるわよ!」

 ジェスの目の前を今にも横切ろうとした女性二人から聞こえてきた会話に、思わず足を止める。同じように隣を歩いていたリュウも目を丸くして目の前の女性を凝視した。

 気配を感じたのか、甲高い怒鳴り声を上げていた女――ルーンがジェスの姿を見つけてぱっと顔を輝かせた。

「ジェス!」

 重そうなドレスの裾を持ち上げ駆け寄ってきたルーンの足は、またもや素足だった。その場にいた者みながぎょっとし、ルーンを訝しげに見つめる。だが当の本人はそんなこと一切気にした様子はなく、楽しそうに笑っていた。

「ルーン王女……また素足で……」

 言いながら、探しても見つからないはずだ、とジェスもリュウも飾り立てられたルーンの顔を物珍しげに見つめた。

 もともとの素材がよいことは普段の姿から知ってはいたが、化粧ひとつでこうも別人のように変わるとは。薄く刷けられた紅や、肌の白さに馴染む自然な頬の赤らみ。整えられた眉。いつもは肩まで垂らしている金の髪はたくさんの髪留めでひとつにまとめられ、そのうちの中に赤い薔薇の髪飾りを見つけて、ジェスはぎくりとした。
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