万年樹の旅人

 しかし、ジェスやルーンが出てくる夢を見ているときとは全く違う。場所はどことなく彼らがいた世界に似ているが、ユナ自身の意識があるときは、たとえ夢だとしてもジェスたちは出てこない。ジェスやルーンのことなどまるで知らない頃にたった一度だけ夢にルーンを見ただけだ。あれっきり、ユナの世界にジェスはもちろん、ルーンが入ってくることは一度もなかった。もしユナの意識があるまま見えるとしたら、今は一切見なくなった、あの獣だけだ。


 そう、あの獣。

 最近では夢に見ることもなくなり、記憶から遠ざかってしまっていたが、思い出してみればあの獣も金色だった。自分を見つめる獣の双眸が怖く、何度目を瞑ってしまいたいと願っただろう。何度夢から目覚めたいと願っただろうか。けれど、そんな思いをよそにユナはひたすら暗闇にぽつりと在り続けた。

 音もにおいもなく、もちろん風なんてものが感じ取れたことは一度だってない。しかし、獣の体毛はいつも気持ち良さそうに揺れていたのを思い出す。まるで、自分の周りだけが時に閉じ込められていているみたいだった。今思えば、不思議で片づけられる程度ではない。自分の意識があることも、同じ夢を見ることも。だが、わかったところで、どうにかできるものでもなかったのだ。


「――やっと、見つけた」
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