君と俺の事情


紗夜side


はぁ…。
おもわず、飛び出して来ちゃった…。
あたしが飛び出した理由。
それは…。
長瀬と2人きりで、密室で、しかも、湿布とか貼られたのとか、色々やばかったし、長瀬の部屋っつーのも…結構、心臓に悪い…。
悪過ぎ。
とりま、早く家に帰ろ。
お腹減ったし。

あたしがのろのろと歩いとると、ふと思い出す。
さっきのことを。
近くにいることを。
しくじった。
そう思う。
あのまま、長瀬ん家にいたら平気だったと思った。


「よくまー集の家に行けるね」

「さっき言ったこと、覚えてないの?」


やっぱり。
さっきからやな予感してたんだよね。
いるんじゃないかって。
もー最悪ー!
迷惑ー!


「しかとすんな!」

「どいて、あたし帰るの」

「…調子、乗ってんじゃないよ!!」


叩かれるか。
そう思って目を閉じた。

―パチンッ

叩かれた〜と思ったが、叩かれたのはあたしじゃなくて、あたしの前に立つ…。


「…長瀬!」

「「集!?」」

「く〜ぅ、女の平手打ちって容赦なっ」


へらへら笑う長瀬だったが、次第に笑顔を無くす。


「1人の女を大人数でイジメんなんて、タチ悪すぎなんだけど」

「集、これは…「言語道断。失せろ。今後一切、紗夜に近づくな!」


睨みつけられた女子達は、早々と逃げて行った。
つか、がん飛ばしヤバ。
めちゃくちゃ怖いわ…。

あたしの方を向いて、笑顔で平気?と聞いてくる。
…コイツ…やっぱ、優しい…。


「なんで追ってきたの?」

「ん〜何て言うか、君がほっとけないんだよね!無意識にさ」

「そうなんだ。助けてくれて、ホントにありがと。それじゃ」

「送ってくよ。また襲われたくないだろ?」

「…ありがと…」


ヤバイ…。
泣きそうだわ…。
人にこんな優しくされんの、初めてだから。
長瀬…。
あたしはあんたに、酷いことしたんだよ?
それでもあんたはあたしに、話しかけてくれるし、気にしてくれる…あんたは…なんなんだよ…。
人の気も知らないで…っ。
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