純愛☆フライング―番外編―
【恋のアタリは誰の手に?】
「ミカンがいい! わたしはゼッタイにミカン1箱が欲しいっ」

「ミカンくらい買えよ。俺はあの、ダイヤモンドコーティングのフライパンセットが欲しいんだ!」

「フライパンのほうが断然安いって! 2階の家庭用品コーナーなら980円で売ってるよ」


11月初旬、ふたりは近所の大型スーパー“ラッキータウン東店”に来ていた。

東店は今週末、オープン10周年記念セールの真っ最中だ。1階エレベーター前の特設会場では福引抽選会が行われていた。

特等はペアの沖縄旅行、1等が首振り式ハロゲンヒーター、2等がフライパンセット、3等がミカン1箱……と続き、ハズレは定番のポケットティッシュである。期間中のレシート3000円につき1回抽選できる、というもの。

3回抽選できる金額のレシートを握り締め、ふたりは飾られている景品の前でどれを狙うか相談中だ。


「バカヤロウ! ダイヤモンドコーティングってのは使い勝手が違うんだよ」


本業はパティシエだが彼は調理師の免許も持っている。料理全般が得意な巽はフライパンを前に熱弁をふるっていた。

すると、作るより食べるほうが得意という志穂がポツリ。


「なんか、たっちゃん……主夫みたい」


彼はピタリとしゃべるのをやめ、志穂のほっぺたを左右からギュッと抓む。


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