恋愛の条件
エレベーターの中で裕樹は壁にもたれかかりながら髪をクシャと下ろした。

「黒沢の名前出しただけであんな顔すんだもんなぁ」

裕樹の顔に苦笑いがこみ上げる。


裕樹なりに奈央を愛していた。

いつか自分のことを見てくれるだろうと待っていた。

彼女自身には、裕樹の想いは伝わっていなかったかもしれないが。


「あんな顔、俺には一度も見せてくれなかった……ムカつくから今朝黒沢に殴られたことは言ってやんない」


裕樹は唇の傷に手をあて、何かふっきれたような表情でエレベーターから下りた。


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