恋愛の条件
(そうよ……いなくなるって、また私の前からいなくなるって知っていたら、絶対に心を許したりなんかしなかった)


それこそどんな男を使ってでも、どんな男と寝てでも、修一を消し去っていた。


(どうして?修、どうして……?)


3年前のあの日が、もう思い出したくもない記憶が甦る。

どん底に突き落とされた朝を、

悲しみに泣き疲れた夜を。


「奈央、今タクシー呼んだから大人しく待ってろよ?」

「…………」

「ちゃんと病院行くんだぞ?」

「…………」

「奈央?」

返事をしない奈央を心配そうに裕樹が覗き込む。

目の焦点があっていない。

「とりあえず、かばんとコートを持ってくるから、ここで待ってて?一緒に病院にいくよ」


(声が出ない……息が……できない)


急に現われて、人の心をかき乱して、忘れられなくさせて、そしてまた急に目の前からいなくなるのだろうか。

何度も好きと思い知らされて、他の男に目を向けることも許されない。

それなら……ただ傍にいたという、そんなひとつの願も叶わないなんて……

こんな残酷なことがあるのだろうか。


(これは……何の罰ゲームなの?)


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