恋愛の条件
ガラガラ----


静まり返った医務室にドアが開く音が聞こえ、奈央は咄嗟に涙を拭きまだ浮遊感の残る身体を支えた。

「裕樹?ごめんね、カバンそこに置いといて。もう、一人で大丈夫だから」

「奈央っ……」

勢いよくカーテンを開けて入ってきたのは裕樹ではなく、奈央が今一番会いたくて、そして会いたくない男だった。

「修……」

「はぁ、はぁ……奈央……」

走ってきたのだろうか、修一は肩で呼吸を整えながら奈央の傍にかけよった。

「お前、倒れたって……」

修一は額から流れる汗も拭わず、奈央を強く抱きしめた。

「バカヤロウ……すっげぇ心配しただろっ」

「…………」

奈央を抱く修一の手に力が入り、その表情からはいつもの余裕の色が消えていた。

「頭打ったって?大丈夫なのか?」

今までになく焦る修一の姿を見て、奈央の心が大きく揺さぶられた。

「修……っ」

奈央は胸の息苦しさを吐き出すように彼の名前を連呼し、その胸にすがりついた。

「な、奈央?」

「ほ、本当なの?」

泣きたくなんかなかったのに、優しく名前を呼ばれ、そのせいで涙が溢れる。

「どうしたんだ?」

「またニューヨークに戻るって本当なの?」

「どうしてそれを……」

ゆったりと背中を撫でていた修一の手が止まり、顔は驚きに染まる。

「さっき山内課長に聞いて……」


< 259 / 385 >

この作品をシェア

pagetop