恋愛の条件
「俺が日本に来たのは……今度こそ奈央を連れていくためだ」

酷く静かで、それでいて甘い声が響く。

何を言っているのだろうか。

理解しきれない言葉がぐるぐると頭の中で回っている。

「3年前の俺には無理だったけど、今なら、今の俺なら奈央を連れて行ける」

「つ、つれて行く……?」


(どう、いうこと?修は何を言っているの?)


これは夢だろうか。

あまりにも悲しくて、自分が見せている夢?

「もうわけ分かんない……」

「何が分かんねぇんだよ?」

今度は呆れた声が降ってくる。

「だって……何で?」

「何でって……」

修一の肩から一気に力が抜ける。

「奈央が好きだからに決まってるだろう。ずっと好きだった」

戸惑う奈央に修一は力なく笑い、押さえていた手を緩めた。

「ウソよ……」

「本当だ」

「絶対にウソよ、そんなこと……」

こんなことありえないとずっと思っていたから、修一の言葉の全てを否定したくなる。

忘れようとして忘れられなかった男が、絶対振り向いてもらえないと思っていた男が、急に手の届く距離に降りてこられてのだ。

これが全て夢で、明日起きたらまた修一のいない日常に変わるのでは、と疑いたくなる。


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