恋愛の条件
「3年前も奈央を離したくなかった。いい加減な気持ちでお前を抱いたんじゃない。俺は入社当時から海外勤務の希望を出していたけど、まさかあんなに早くニューヨーク支社へ転勤になるなんて夢にも思っていなかった。いざ、辞令が下った時は嬉しさよりも戸惑いの方が大きかった」

言葉を続ける修一の手は相変わらず優しいが、表情は少しバツの悪い顔へ変わる。

「大学院時代の彼女と別れてから、女とは最低な付き合いしかしてこなかった。仕事が忙しい間はそれでいいと思っていたし……」

「知ってる……」

奈央はずっと傍で修一が他の女と一緒にいるのを見てきているのだ。

それを知ってか、修一の顔が自嘲気味に笑う。

「女とそんな付き合いをしていながら、奈央にすごく魅かれる自分がいた。いつも俺の傍にいてくれて、笑ってくれる奈央の存在がすげぇ居心地よくて……奈央の俺への想いも気づいていたが、お前との関係だけは壊したくないと思っていた」

「----えっ?」

奈央の目がぱちぱちと見開く。

信じられないことの連続で、普段は頭の回転が早い奈央だが、今ひとつ修一の言葉を理解するのに時間がかかる。

修一が自分と同じように、思っていた?

この関係を崩したくない、と?

その前に、自分の気持ちがバレていた、そのことの方が奈央には驚きだったらしく、更に動揺した。


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