恋愛の条件
「自分を抑えようと思っても、ニューヨークに行くとわかってても、俺は自分自身を止められなかった。奈央に会えなくなると思うと尚さら奈央が欲しくなった」

「じゃぁどうして……どうしてあの時言ってくれなかったの?」

「言えるわけねぇだろっ!何て言えばよかったんだ?いつ帰ってこれるかわからないけど、待ってろって?」

「ちがう!修の気持ちよ!一言私のことを好きだって言ってくれれば……」

そう言ってくれれば、あの時あんな思いはしなくてもすんだ。

離れることは辛かったかもしれないが、惨めな思いはしなくてすんだのだ。

「それこそ言えるわけねぇだろ?好きだからニューヨークに行く前にヤらせろって言えるか?」

「………?」

ちょっと待て、と奈央は自分自身に言い聞かせる。

じゃあ、ヤらずに行けよ、と思うのは奈央が間違っているのだろうか。

「本当は一緒にニューヨークへ連れて行きたくて奈央をそのままさらっていきたかった」

「修に待てって言われれば、何年だって待ってたわよ!2年も片想いしてたのよ!?ちゃんと修の気持ちを聞いていれば……あの時、私がどんなに傷ついて、どんなに惨めな思いしたか」

ことを理解し始めた奈央が修一に反撃に出る。

「それをやるだけやってそのままおいていくなんて!!欲求不満の捌け口だったんだって思ってたわよっ!!」

「あの時の俺は器も小さくて、奈央を抱える自信がなかった。遠距離恋愛なんてそれこそ自信がなかった。奈央に仕事をやめさせてまで連れていくことは、あの時の俺には無理だったんだ」   

修一は胸をポカスカ叩く奈央をぎゅっとを抱きしめ、言葉を続けた。

「好きな女を腕に抱いて、俺はらしくもなく最低のウソをついた。そして、傷つけてでもいいから、お前の記憶に俺を残しておきたかった」

「…………」

「すっげぇ後悔したけど、でも、どうすることもできなかった」

「か、簡単に言わないでよ、あの後私がどんな想いで、どんなに辛かったか……」

修一の胸を叩いていた奈央の手がとまり、また涙が溢れてきた。

「奈央……」

「最低のことされたって思ったわ。やっと想いが通じたと思ったら、ニューヨークに転勤って、人を馬鹿にしてっ……」

奈央は修一にしがみつきながらもずっと言えなかた言葉を吐き出した。

「大っ嫌い!あんたなんて顔も見たくないくらい大っ嫌い!修以上の男を見つけて見返してやるって、惨めな涙を流した分幸せになってやるって、ずっと、ずっとそう思ってたのに……それなのに修のことが忘れられなくて、バカみたいにあんたのこと想い続けてたわよっ!!」


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