恋愛の条件
「奈央はもうそんな先のことまで考えてんの?」

「女は色々と考えることが多いの!」

「そうなの?」

「そうよ!男と違って仕事と家庭の両立とか、子供ができたらどうしようとか、親も友達もいない中、自分がちゃんとしっかりしなきゃ……とか思うのよ?」

「仕事との両立って……今更だけど受けることにしたんだ?」

修一が奈央を覗き込むように尋ねる。

その声は、咎める色もなく、優しく奈央を包む。

「えっ……?う、うん……」

「奈央の好きにしたらいい。俺は奈央が決めたことはできる限りサポートするし……」

「修……」

「でも何か浮かない顔しているけど……?」

「だって……」

「どうした?」

修一は俯く奈央を傍に抱き寄せた。

「私……羨望の中思いっきり幸せな顔してみんなにニューヨークへ送ってもらおうと思ったのに……仕事を続けるとなったら修とのこと秘密にして行かなきゃいけないじゃないっ!」

「お前……そんなこと考えてたの?」

修一の呆れた声が降ってくる。

「悪い?」

「イヤ……別にいいけど……」

「何よ……我慢してないで笑いたきゃ笑いなさいよっ」

「クスクスクス……ホントお前って可愛いよなぁ……」

「バカにして!さっさとお風呂入れば!?明日早いんでしょ?」

修一の腕から離れ、キッチンの壁についているお風呂の自動ボタンを押す。

修一が帰って来る前にお風呂掃除は済ませ、お湯をはるだけにしてあったのだ。

それも新妻気分でしたことは言うまでもない。


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