恋愛の条件
真っ赤になっているのはアルコールのせいだけではないだろう。

修一はわかっていてそんな奈央をからかう。

「感じてなんかないわっよ!」

「気持ちよかった?俺の3年ぶりのキス♪ひっさしぶりに奈央のトロンとした顔見れたなぁ……」

病気がうつる、と奈央は思いっきり唇を拭き、修一を睨み返す。

それが奈央の生一杯の反抗だった。

「ひでぇなぁ……傷つくぞ?」

全く傷ついた素振りも見せず、修一はそっと奈央の頬に手を寄せ、こめかみから首筋へ指を下ろす。

一瞬奈央の身体がビクンとはねる。

その反応に満足したのか、修一は低い笑いを零し、立ち上がった。

「さて、殴られそうだから行こうかな?奈央、また明日な♪」

修一は、沙希とあやに「お疲れ」と言い残し、何事もなかったようにその場を去って行った。

奈央は呆然とその背が視界から消えていくのを待つことしかできなかった。

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