恋愛の条件
自分がどうこうというより、やはり本気で愛されたことなんかなかったのかもしれない。


(あれ?ヤダ……何で?泣けてくる……)


奈央は瞳に溜まる涙を零さないよう、ぐっと堪えて上を仰ぎ見る。

トレンチコートを羽織っていても、まだ肌寒さを感じる中、街路樹の桜が見事に咲きほこり綺麗にライトアップされていた。

少し強い風が吹き、桜の花びらが奈央の頬を伝う涙と共にそっとかすめ、散っていく。

奈央は掌の上に落ちた桜の花びらを見つめ、言いようのない虚しさにとらわれた。


(はぁ……何でこんなキレイな光景を私一人で見てんだろ?)


 
気付くといつも一人でいるような気がする。


(いて欲しい時にどうしていて欲しい人が傍にいないんだろ?)


言われたことばに傷ついているわけじゃない、こんなことは大丈夫だ、と自分に言い聞かせる。

ただ今の自分の状況が虚しくて同じことを繰り返してばかりの自分に少し情けないだけだと……

涙がまた込み上げてきそうになった時、急に強い力で腕を引かれた。



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