月下の幻 太陽の偽り (仮)
呼び止められるとは思っていなかったようで、彼は部屋に入らずに開けた扉がそのまま閉じてしまった。

「俺の名前?」

「そう、アンタの名前よ」

そう言うと彼は少し考える素振りを見せ、しばらく後名を答えた。

「俺の名はガラフ・レコリダ、ガラフと昔は呼ばれてたな。」

「ガラフ…」

私はその名を口にした時、何故だか心の奥で何かがつっかえた。

聞き覚えがあるような、無いような…アリンと言う名前と同様、記憶があやふやだ。

「それじゃあな。」

ガラフは今度こそ部屋の中に入り、扉が閉まった。

「ガラフ…」

私はまたその名を口にしていた。

< 39 / 127 >

この作品をシェア

pagetop