血も涙もない【短編集】




カチカチと時計の針が時を刻む音だけが響く。それ以外の音は全て消えてしまって、嫌にはっきりと時が刻まれていた。
うるさいと、眉をしかめてしまいそうになるほどだ。



「あたし、ひとりぼっちになっちゃったよ…」


ポツリの聞こえた新しい音。
そして、次の音は、涙が床に叩き付けられた音だった。
正直に言えば驚いた。
でも、こいつにとって兄貴の死がどれほど大きくて、どれほど辛いことなのか、
そう考えると、今までふざけあえていたことの方が不思議なのかもしれねぇな。

兄貴が大好きで、
でもそれを誰にも言えず、
苦しんでいた頃の、
こいつの姿を思い出す。
血に濡れた手で、
兄貴の写真を眺めていたっけ。






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