血も涙もない【短編集】
「かいらのおにいちゃんはてつぼうがじょうずだった」
「俺も得意だぜ」
結局、近くの公園で海羅の母親が捜しに来るのを待つことにした。
鉄棒にぶら下がり、兄のことを自慢気に話す海羅に俺もカッコイイとこを見せようと鉄棒に手を伸ばす。
その瞬間、海羅がパッと俺から目を逸らしたのと同時に俺の手が鉄棒をすり抜けた。
「あ…」
そうだった。
俺はもう人間じゃないんだ。
死んでしまったんだ。
「ゆーれいさん、しってる?」
海羅の小さな手が俺のすり抜けた手に触れる。
伝わってくる熱は、
もうこの子からしか感じることは出来ないのだと気付いた。
「いまならさわれるよ」
「え?」
どういう意味だか解らなかった。
今なら触れる?
試しに海羅と触れている反対の手で鉄棒に触れて見る。
「……嘘」
そこからは、鉄棒の冷たさが伝わってきた。ぐっと手に力を入れる。ちゃんと握れている。手が通り抜けない。