血も涙もない【短編集】
俺は海羅の頭に手を置いた。
通り抜けないでちゃんと触れた。
海羅の笑顔が彼女と被る。
「お母さん、捜そっか」
「うん!」
俺も笑顔を向けることが出来た。
不思議だった。
海羅に会うまでは憎しみでしかなかったこの心が、温かい。
全て海羅のおかげだった。
この小さな体で悲劇を知っても尚、こんな笑顔を見せてくれるからだろう。
「お母さんの特徴は?」
「とくちょう?」
「んーと、どんな格好してる?」
「かわいいおようふくきてる」
「アバウトだなー」
「あばうと?」
「あーいやいや。じゃあさ何色の洋服着てた?」
「んとね、ちゃいろ」
ハテナを頭に浮かべまくりの海羅と、頭を抱えながら言葉を選んでしゃべる俺。
服の色聞くだけでどんだけ手間取ってんだ。
これは、捜すってより捜してもらうの方がいいかもしれない。
きっと、海羅の母親も捜してるだろうし。