お化けと探偵
「何をかんがえておる。むつかしい顔をして。」




半透明のそれが私に話しかけてくる。やはり現実だ。ちなみに彼女は何らかの不足の事態、感情の大きな起伏がない限り、倒置して話す。うっとおしい限りだ。




「何を考えていたということを話す必要がある場合しか、その質問には答えかねる。仮に余暇として話す場合でも、存在をまだ認めることができない相手との会話を楽しもうとも思えない。さらにいうと年下の女性にため口で話されるとどんな質問も答える気にならない。」




と私はかけている眼鏡の僅かなズレを直しながら彼女が見える方向に答えた。彼女は私の右手が定位置に戻る前にこう挟んだ。



「ならば言わせてもらうが、お前は考えていたのだろう?私のことを。なにが悪いのだ、その事を憂いて。また、お前は楽しんでないだろう?余暇で話すときも。そして、最後に私は年上だ、お前よりもな。」



さらに私の右手が定位置に戻る寸前にこう続けた。




「お前のほうだ。敬語を使うのは。と言いたいところだが、許してやろう。私は寛大だからな。」





そして、私の右手が定位置について、指を組み落ち着いて彼女のいったことを整理しようとしていると、彼女はこう呟いた。


「しかし、誰もこないなあ、この探偵事務所には。」

その言葉で彼女の戯れ言を整理することを中断することにした。私にはそんなことより大事なことがあるのだ。
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