はらり、ひとひら。
ずるりと手足から力が抜けた。全身の血液が冷めていく感覚。
「原因、は」
「真弓さんの方は入院して精密検査をしていますが…まだわからないとのこと。渉貴を襲った妖は、見た者によると黒い巨体で、一つ目の手足のない妖だったと」
─確信する。この間の妖だ。
「普段なら渉貴ほどの祓い人があの程度の妖に押し負けるとも考えにくい…不意打ちの事故ということになります」
「容体は」
「……わかりかねます。けれどお医者様もついています。あなたが心配する必要はありませんよ」
しわしわの祖母の手が俺の頭を撫でて、強制的に部屋に押しやった。
「父上に、父上に会わせてください! っ、いるんでしょう、家に…」
「なりません。悲しいことにとても…見れる状態じゃありません」
「っ」
半身食われたとあれば普通の病院に行けるわけもない。下手すれば警察沙汰だ。
なおも頼み込むが婆様は許してくださらなかった。結局俺は祖母に宥めすかされ、眠れない夜を過ごした。
・ ・ ・
─それから数日後の早朝。婆様に起こされ寝起きの働かない頭で祖母のあとをくっ付いて行った。
やけに人が多い、と不思議に思う。おそらく家で働く大勢の使用人、お坊さん、知らない人も大勢広間に出入りしていた。
「…婆様、これは」
「落ち着いて聞きなさい。真澄さん、…渉貴が」
─今朝早く、息を…