さらば、ヒャッハー


藤馬の話からして、野槌の祟りは“きっかけ”がなければ、真価を発揮しない命喰いだ。


この場合のきっかけとは、溝出に致命傷を与えること。逆を言えば、致命傷を与えなければ動いていられる。


冬月がした首切りは昨日だ。その前の致命傷なら一昨日の朝に、ポチの散歩中、日頃の恨みだと田んぼの水路に突き落とそうとして、逆に自分がドロドロのびしゃびしゃになって帰ってきた時。嘘をつくのが苦手なヒャッハーは朝からバラバラにされた。


野槌の祟りと言うのがその前からあれば、この時には既に溝出は動かなくなるはずだろう。しかして、午後から秋月の妖怪退治に付き合わせるべく、バラバラのままガムテ補強でついてこいと無理強いをさせたのだ。そこから秋月とこの山で、鬼を誘き出す餌として逆さ吊りにされていた溝出は動いていた。


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