もっと大切にする~再会のキスは突然に~

「いいかげん、ちゃんと気持ち伝えてきたら?」

呆れたように繭子ちゃんが忠告したのはあれからまた1週間ほど経った日勤終わりの更衣室。

「なにが?」

わかってるのにわからないフリをして目を合わさない私。

「もう、全然みていられないわ。その作り笑顔も、腑抜けた態度も、生返事もぜ~んぶよ!」

作り笑いなんか、してない…つもり。

「葵、目が笑ってないから余計に怖いわ。後輩達なんてびびって声かけてこないでしょ?」

そう言えば…いつも私に他愛もない話をしてくるゆきちゃんも業務外のことは言わなかった…

かな?


「葵って黙ってたら怒ってるみたいだしね。その腑抜け具合も歳取ってるのに見苦しいわよ?」

ちょっと、ねえさん?言い過ぎじゃない?歳とってるのは関係なくない?
怒って見える顔、一番のコンプレックスなんですけど?

この顔で若かりし頃どれだけ苦労したか。

高校も看護学生時代も、何かしらグループをつくる際に警戒されて、仲良くなった途端『葵って性格悪くて、きつそうだと思ってたよ~』なんてカミングアウトされる。

この場合、ばらされて喜ぶ人って誰もいないからそのまま黙っていてくれたらいいのに、全然素直に喜べないんだけど…
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