美味しい時間

フッと課長が笑う気配がした。
いつまでもこんな気分じゃいけないと自分の顔を両手でパンッと叩き、立ち上がる。

「今度こそ、お風呂いれますね」

「一緒に入る?」

「入りませんっ! 慶太郎さん、怒りますよ」

「ごめんごめん」

お道化ながら豪快に笑う課長。
気持ちが決まるまで待つ……なんて言っておいて、すぐこれだもん。
まったく……。
バスルームまで行き、バスタブにお湯を溜め始めると、さっきまでの不安な気持ちがなくなっていることに気付く。

「もしかして、課長のあの言葉って……」

一緒に入る? って冗談言って、私を和ませてくれた?
自然に身体中から、愛おしい気持ちが溢れてくる。
きっとこれが、本当の私の気持ちなんだ。
そう思うとフッと肩の力が抜ける。

「慶太郎さんと愛し合いたい」

自分でも気づかないうちに、そう呟いていた。
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