美味しい時間
頷いてからそっと顔を上げると、また流れだした涙をそっと指で拭ってくれた。
「この涙の意味は?」
ふっと優しく微笑みながら、そう問われた。
意味なんて何もない。あるのはたった一つ……。
「愛してる……」
ただその気持ちだけ。
嬉しそうに片手で私の腰を抱き寄せると、頬にキスを落とした。
そして耳元に唇を寄せて甘く囁く。
「ねぇ百花。慶太郎って呼んでみ」
「えっ?」
「それと敬語も禁止」
何で今じゃなきゃいけないんだろうと思いながらも、その言葉に従う。
「……慶太郎……」
それが合図となり、どちらからともなく唇が合わさる。
優しく丁寧なキスに、緊張していた心は解されていく。それとは対照的に身体は
熱を帯び始め、甘い嬌声が漏れた。