美味しい時間

「ここに呼ばれた理由、分かるかしら?」

はぁ? まぁ、このメンツだもん。課長絡みだよね、きっと……。
でも、分かりませんと言わんばかりに首を傾げていると、呆れたような
溜息が聞こえてきた。

「はぁ……。藤野さん、あなた東堂課長とどういう関係?」

やっぱり……。どこかで一緒にいるところを見られてたんだろう。
最近の私、ちょっと浮き足立ってたし……。失敗した。
でもこういう場合、何て答えたらいいんだろう。
お姉様たちがどこまで知っているのか分からないし、正直に言って
いいものなのか悩んでいると、痺れを切らした冴子が、大きな音を
立ててテーブルを叩いた。

「早く答えなさいよっ!! ホントにとろい子ね」

ヒドい言い草に俯いて、歯を食いしばる。そこまで言われても言い返せない
自分が悔しくて、涙が出てきそうだ。

「まぁいいわ。お弁当を作ってあげて一緒に食べる? 恋人気分かも
 しれないけど、あなた課長が本気だとでも思ってる?」

思ってるよっ! 

だって、『大好きだ、愛してる』って言ってくれる。
たくさん話しをして、想いを伝え合ってる。
身体の関係だけじゃない深い絆が、二人の間には出来てきている……はず。

ただこのことはまだ、会社の人間には秘密。





 
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