美味しい時間
勝手かもしれないけれど、課長と付き合っているからといって、仕事の
評価が甘いと思われるのが嫌だった。
私個人としての実績を残したい。その為に、課長から与えられる大量の
仕事を残業してまで頑張ったんだもん。
「さっきから何の話をおっしゃってるのか分からないんですけど」
こうなったら、知らぬ存ぜぬを貫き通すしかない。
すんなりと納得はしてくれないだろうけど……。
「そう。あくまでもしらを切るってわけ」
そう言って、フフッと魂胆ありげに笑うと、私の思いもよらない一言を
言い放つ。
「東堂課長に、大阪支社転勤の話があるの、ご存知?」
えっ?
全く知らないその事実に、思わず目を見開いて驚いてしまう。
「その顔は、知らなかったみたいね。」
一瞬勝ち誇ったような顔をして、話を続ける。
私は頭の中が真っ白になり、瞬き一つできないでいた。