美味しい時間

先輩には、家に取りに行くものがあるから少し遅れると連絡を入れた。
本当のことを話しても良かったのだけど、今は誰とも話したくない。それが
たとえ美和先輩でも……。

テーブルに突っ伏し、何も考えず時の流れに身をまかせた。
さっきまでは聞こえなかった時計の音が、やけに耳につく。
口から出てくるのは溜息ばかりだった。

「はぁ……。会社、戻りたくないなぁ」

冴子やお姉様たちの顔を見たくない。
でももっと、課長の顔を見たくなかった。

冴子は同じフロアにいる。私が戻れば、絶対に監視をするはずだ。
しばらくは会社内の監視では済まないかもしれない。

(出方次第では課長の首も危うくなる……)

冴子のことだ。私が今までと態度を変えなかったら、きっと何らかの行動を
起こすはず。
でもよく考えれば、冴子が課長の首を危うくするはずがない。自分の好きな
人なんだから。
だったら? 私を陥れる?

「はぁ……」

どちらにしろ、私と課長の関係は続けられそうにないわけだ。
< 131 / 314 >

この作品をシェア

pagetop