美味しい時間

『やっと出てくれた……。いろいろ話がしたい。今からそっちに行く』

「…………」

『百花? 俺の話、聞いてる?』

ダメだ……。課長の声聞いてるだけで泣きそう。
やっぱり、大好き……。
ずっと一緒にいたい。
でも、そんな私のわがままで、課長の一生を台無しにはできない。課長の
事が好きで大切だからこそ、ここは身を引かなくちゃ……。

「こ、来ないで……ください」

『どうして? お前、昼からおかしくないか? 何があった?』

「べ、べつに、何もありません。課長……もう、ここには来ないで下さい」

堪えていた涙が瞳から溢れだす。もうこれ以上は話すのは無理……。
泣いているのを知られないように、何とか声を出す。

「課長は私なんかと付き合ってちゃダメなんです。もう……終わりに……」

ここまで言うのが精一杯。
すると、電話の向こうの課長の声が、今までとは全く違うものになった。
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