美味しい時間
フロアに戻ると、さっきまでのザワつきは収まっていた。ただ一箇所だけは、
まだ人集りが出来ていた。そしてその中心にいるのは、今回のザワつきの発
信源、倉橋さんだ。
そちらに背を向けるように中に入ると、課長のデスクが目に入った。
本来その場所にいるはずの人は、今日はいない。ホッとしたような、寂しい
ような、何とも言いがたい気持ちになってしまう。
その場からサッと目線を外し、自分の席まで急いだ。
美和先輩が言っていたとおり、私のデスクには山のような紙の束が積んで
あった。その光景に小さく溜息をついていると、美和先輩がくすくす笑って
いるのに気づいた。少し睨むようにそっちを見ると、先輩がぺろっと舌を出
しおどけてみせた。
椅子に座り、その紙の束を手に取った。相変わらず、ひとつひとつの仕事別に
付箋が付けてあり、丁寧な字で支持が書き込んであった。
でも今までとは何かが違うことに気づく。確かに支持は書いてあるけれど、
最終的にそれをどうしたら良いかがよく分からないのだ。
課長にしてはありえない。