美味しい時間

鍵を開けると手早くドアを開き、私を押しこむように中へ入れた。
課長も中に入ると後ろ手でドアを閉めたかと思うと、背後からギュッと抱き
しめられる。首筋に顔を近づけると、いつもより低い声が耳に響いた。

「なぁ、何であんなメールしてきた」

艶っぽいその声色に、身体が蕩けそうになる。
立っているのもやっとなのに、今度は首筋をきつく吸い上げた。チクっと痛み
が走る。

「やめ……て……」

「じゃあ答えろよ。何があった?」

言えるものなら、とっくに言っている。それができないから苦しいのに……。
強く抱きしめられている腕から逃れようと身をよじると、身体を反転させら
れた。思わず合ってしまった目を、透かさず外す。

「ちゃんと、こっち見ろよ」

口調がだんだん強くなる。
何か言わなければ、この状況は変えられない。でも何を言えばいいか、全く
浮かんで来なかった。

「百花っ。俺の目を見ろっ!」

その命令のような口調に、身体がビクッと跳ねる。そしてゆっくり、課長と
目を合わせた。


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