美味しい時間

倉橋さんの視線が痛い。
会議室に呼ばれた理由を知らない彼女の、私に対する怒りは相当なものの
ようだった。

何で私が睨まれなくてはいけないんだろう……。

憤りにも似た気持ちを何とか抑え、午前中の仕事を終える。
会社のどこかにはいたのだろうけれど、課長がデスクにいなかったことも
幸いした。もし目の前に課長がいたら、それだけで仕事はできなかっただろう。

かなり身体を強ばらせて仕事をしていたのか、肩に軽い痛みが走った。首を
くるくると回し痛みを緩和させていると、フロアの出入口から私を呼ぶ
声が聞こえてきた。

「藤崎~っ」

あまりにも大きな声で、フロア中に声が響く。フロア中の視線が、その声の主を
見てから私に転換される。
途端に恥ずかしくなり慌てて席を立つと、同時に課長がフロアに戻ってくるのが
見えた。

「寺澤、声がでかいっ」

いかにも機嫌が悪そうな顔と声で、寺澤に言い放つ。
寺澤は全く気にした様子も見せないで、平然と課長に向き直った。

「東堂課長、お疲れ様です。藤崎、借りますね」



< 196 / 314 >

この作品をシェア

pagetop